たった3%のためにできること ~ピーキング、あるいはそのためのテーパリング②~
皆さんこんにちは、Yuです。
今日はコンディショニングの続きです。
前回、いわゆる「超回復」が理論モデルとしてはあまり依拠されていないことを話しました。
とはいえ、週に2回程度筋トレをしている人などの成長を考えると、まさにこの「超回復」理論の通りといっても差し支えないのですが…。
しかしたとえば、この理論だと最近の筋トレ方法論で増えている、「高頻度トレーニング」などの説明がつきません。
ここ最近、ウェイトリフティングやパワーリフティングなどの分野では、週5、6のトレーニングを行う人がザラにいます(最近どころか、ウェイトリフティングの世界ではむしろ当たり前の、伝統的といって良い手法です)。
それも、スクワットやベンチプレスのような、高重量のコンパウンド種目をです。
超回復の理論が正しければ、こんな方法論は絶対に間違いです。
スクワットを週に5回も6回もやっていたら、ダメージが蓄積して、強くなるどころか逆に弱くなってしまうでしょう。
しかし、それでも現に高頻度で結果を出している人がいるのです。
あるいは、今でも高頻度トレーニングについて、「遺伝的に特別強い人だけができる、極めて特殊な方法」と思っている人がいるかも知れません。
他にも、基本的に毎日練習を行っている体操選手の腕や肩がなんであんなに発達しているのか、従来の超回復理論では「謎」とされていました。
ダメージを受けている間は練習してはいけないというのなら、体操選手の腕はガリガリにやせ細っているはずです…
しかし、「超回復理論」とは別のとらえ方をすると、これらの方法もそれなりに根拠があることになります。
むしろ、最近のスポーツ科学の研究は、「全身法」や「高頻度トレーニング」といった方法を、だんだんと支持し始めています。
それでは、今はどのような理論が主流なのか?
それは、「フィットネスと疲労の2軸理論」です。
用語自体は今私が勝手にこしらえたので、研究や競技の現場ではもっと違う呼ばれ方をしているかも知れません…
でも、原理はこれから説明する通りです。
まず、最近の知見では、こう考えます。
「フィットネス、つまり身体能力の向上と低下は、比較的ゆっくりとしか起こらない。それに対して、疲労の蓄積とそこからの回復は、比較的すみやかに起こる」と。
かんたんに言うとこうです。
トレーニングをすると能力が上がります。
たくさん走れば速くなるし、たくさん筋トレすれば強くなる。
しかし、この能力の向上や低下は「ゆっくり」としか生じません。
今日100m13秒の人が、翌週いきなり12秒にはならないということです。
その代わり、1週間ぐらい練習をサボっても、いきなり14秒にもなりません。
長い時間をかけて、フィットネスは少しずつ変化するのです。
それに対し、疲労はどうか。
疲労は比較的すぐに蓄積し、またすぐに回復します。
トレーニングを頑張った翌日は、疲労がガツンと溜まります。
筋肉痛にもなるし、体もむくむ。
疲労は、その人の身体能力を一時的に低下させます。
その結果、一時的にフィットネスが低下したように見えます。
じつは、練習した分だけわずかに身体能力は向上しているはずなのですが、疲労のせいで実際のパフォーマンス自体は落ちるのです。
この辺で次回に続きます。