そのスクワット、どこまでしゃがむ?~スクワットの深さについて、深く掘り下げよう⑦~
さて、前回の続きです。
フルよりクォーターの方が筋力やジャンプ力が伸びたという実験についてでした。
そして、「普段から筋トレをしている上級者には、クォーターがスポット的に効いた」というのが私の解釈でした。
クォータースクワットは、可動域が狭いのでフルよりも高重量でセットを組むことができます。
そして、これはパワーリフティングなどでは良く行われるのですが、「動作の終動付近に限定して強い負荷をかける」という練習法があります。
具体的にいうと、ハーフスクワットやハーフベンチで可動域を半分にして、通常のフルレンジでは挙がらない高重量を挙げるというものです。
他にも、鎖やゴムバンドを利用した練習もあります。
人間、スクワットでもベンチプレスでも、ボトム位置、つまりバーを下げきった位置が一番弱いです。
逆に、脚や腕を伸ばしきるトップ近辺だと、出力は強くなります。
なので、ギリギリ1回挙がる限界の重量でも、動作の後半部分に限ればまだ余裕があるのです。
その余裕のある可動域の力を「搾り取る」のが、この練習の目的です。
通常のフルレンジのトレーニングで記録が伸び悩んだ選手が、限界を打ち破る為に行うことが多いです。
当然、メインの練習として恒常的に行うわけではありません。
常にハーフで行っていれば、いずれボトムが弱点になってしまうでしょうから。
ちょうど、この練習法と同様の効果がこの研究でも起きていたのではないか、というのが私の解釈です。
普段からフルスクワットを行っていてある程度高いレベルにいた参加者が、一定期間に限って高重量のクォータースクワットを行い、その限界を破ったのです。
記事の始めの方(このタイトルの②)で紹介した内容を覚えていますでしょうか。
初心者を対象にした同様の実験では、複数の実験で、クォーターよりフルの方が優秀な結果を出しています。
そして、そこからのジャンプ力向上もフルの方が大きかったのです。
基本的には、こちらの方が信頼に値するというか、トレーニーが基本方針とすべき結果だと考えられます。
筋トレの基本は、フルストレッチ・フルコントラクションです。
完全伸張・完全収縮。
つまり、筋肉を伸ばしきって、そこからしっかり収縮させるというのが大原則です。
だとすると、クォータースクワットの方がフルより優秀というのは、きわめて限的的な局面を切り取っていると考えた方が自然です。
人間、トレーニングを積んでレベルが上がるほど、その伸びしろは小さくなります。
プログラムは長く複雑になるにもかかわらず、増やせる重量は少なくなります。
この「プログラムを複雑にする」方法の一つとしてなら、「一時的に高重量のクォーターを狙う」という選択肢はじゅうぶん有り得ます。
フルスクワットの伸びしろが小さくなっていたところに、高重量のクォーターをやったおかげで手薄な部分(スクワット動作の終動付近の筋力)が強化された、と考えるのが適切ではないでしょうか。
このように考えることで、一見すると矛盾した研究結果にも整合性を持たせることができると思われます。
この辺で次回に続きます。